專欄
着物の種類・格一覧を分かりやすく解説!適した着用シーンも紹介
着物の基礎知識
目次
和服にも洋服と同様、着物から帯、小物に至るまで『格』というものが存在します。
そのため、場の雰囲気やご自身の立場に応じた使い分けができないと、知らないうちにマナー違反になってしまうこともあります。
この記事では、女性の着物の種類や格を分かりやすく解説します。TPOにあった適切な装いで、ぜひすてきな着物スタイルを楽しんでください。
シーン別のおすすめ着物一覧表
着物の格は素材や模様、柄の置き方や紋の数などによって変わるため、TPOにあわせて適切な格の着物を選ぶことが大切です。
以下の一覧表は格が高い順に上から並び、代表的な着物の種類とおすすめの着用シーンを紹介しています。
着物の格 | 代表的な着物 | シーン |
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正礼装(第一礼装) |
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準礼装(略礼装) |
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外出着(盛装) |
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普段着(街着) |
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着物の格の種類
着物を選ぶ際の決まりごとは複雑に感じられるかもしれませんが、基本的な格を理解できればそこまで難しく考える必要はありません。
着物は、一般的に『正礼装』『準礼装』『外出着』『普段着』の4つの格に区分されます。ここでは、それぞれの格の種類について詳しく解説します。
正礼装(第一礼装)
正礼装または第一礼装は最も格が高く、式典や冠婚葬祭などの特別なシーンで着用されるものです。
既婚女性の正礼装は、黒地に五つ紋が施された『黒留袖』で、結婚式の主催者側として出席する際などに用います。
一方、未婚女性は『本振袖』を用い、花嫁の婚礼衣装や成人式の着物として着用します。
また、既婚・未婚を問わず着用できるのが『色留袖(五つ紋)』と『黒紋付』で、いずれも特別な席に相応しい品格のある装いです。
現在は、結婚式でのみ用いられる『打掛』も正礼装の一つです。
準礼装(略礼装)
正礼装に次ぐセミフォーマルなシーンで着られる着物が、準礼装です。結婚式の付添い人や法事、七五三などの行事で着用される着物となります。
同じ種類の着物でも紋の数や柄、帯の組みあわせなどによって準礼装とよりカジュアルな略礼装とに分けられます。
準礼装の代表的な着物には、『訪問着(三つ紋・一つ紋)』『付け下げ』『色無地(一つ紋)』『色留袖(三つ紋)』などがあり、未婚女性は『中振袖』と『小振袖』も準礼装として着用します。
また、『色留袖(一つ紋)』や『訪問着(紋なし)』などの位置づけは略礼装です。
外出着(盛装)
外出着は趣味として楽しんだり、お茶会や観劇のようなシーンで礼装程気負わずに着用できる着物です。
外出着には、『付け下げ小紋』『紬の訪問着』『絞り』『更紗』などがあります。『小紋』『紋なしの江戸小紋』『御召』については、着物の種類の項でもご紹介します。
普段着(街着)
普段着は、ちょっとした外出の際などに用いられる最もカジュアルな着物の格です。普段の生活で使われるため、派手すぎずお手入れや保管がしやすい着物が区分されています。
買物や街歩きに適したカジュアルな装いのため、あまり着付けの規範に縛られず自由で気軽な着こなしも可能です。
普段着の代表格は、お手入れしやすく丈夫な『木綿』や『ウール』、『絣』、気負わず着られる絹織物の『銘仙』や『黄八丈』などが挙げられます。
また、後述する『紬』と『浴衣』も普段着の仲間です。
格式順│女性の着物の種類
ここでは、代表的な着物12種類を紹介します。
まず最も格の高い正礼装からは『打掛』、『黒留袖』、『色留袖』、『黒紋付』、『振袖』の5種類。次に準礼装の着物は『訪問着』、『色無地』、『付け下げ』の3種類。
外出着としては『小紋(江戸小紋)』と『御召』を、普段着として『紬』と『浴衣』をご紹介します。
打掛(うちかけ)
正礼装である打掛は、女性が未婚者として最後に着用するもので、花嫁衣装として知られる着物です。
打掛は、『白無垢(しろむく)』と『色打掛(いろうちかけ)』に分けられます。
最上格の白無垢は、中に着る掛下から上に羽織る打掛まで小物を含めて殆どを白色で統一し、真っ白であることから白打掛とも呼ばれます。
一方の色打掛は、赤やピンクなど豊富な色があり、柄も鶴や鳳凰などの縁起のよい吉祥文様が描かれていて、華やかさを楽しめる着物です。
色打掛は挙式にも使えますが、披露宴のお色直しで着用することが多い着物です。
黒留袖(くろとめそで)
黒留袖は既婚女性、または未婚で振袖を卒業した女性の正礼装とされています。
黒の地色に、背中・両袖・両胸に染め抜きの五つ紋が施された比翼仕立ての着物で、結婚式の場では、新郎新婦の母親や祖母、仲人夫人などが黒留袖を着用します。
上半身は無地ですが裾まわりには吉祥文様などのおめでたい柄が描かれ、広げたときに一枚絵のようになっている絵羽(えば)模様のものが一般的です。
色留袖(いろとめそで)
色留袖は、地色が黒以外の鮮やかな色調で、裾まわりのみに模様が入った着物です。
絵羽模様や仕立てなどは基本的に黒留袖と同じですが、色留袖は既婚・未婚を問わず着用できます。
色留袖を含め、紋の数や有無で格が変わる着物は多くあります。
例えば、五つ紋付の色留袖は、結婚式で新郎新婦の親族の女性が列席する場合に適した装いとなります。
また、三つ紋付の色留袖は準礼装にあたるため、華やかなパーティーやお宮参り、七五三などの行事にも着用が可能です。
さらに、一つ紋付の色留袖は略礼装として位置づけられ、友人との食事会や観劇などの比較的カジュアルな場面でも着られます。
黒紋付(くろもんつき)
黒の五つ紋付の着物は黒紋付とも呼ばれ、光沢のない黒地の無地に染め抜きの五つ紋が施された正礼装です。
黒紋付は本来は華やかな帯や小物とあわせ慶事の席でも着用できる着物でしたが、現在では黒共帯をあわせて喪の席で遺族が着用する喪服としてのイメージが強くなっています。
振袖(ふりそで)
振袖は未婚女性の礼装で、長い袖が特徴的な着物です。袖の長さによって『本振袖』、『中振袖』、『小振袖』の3種類に分けられます。
本振袖は袖の長さが最も長く115センチ前後で、華麗な総模様であるため成人式をはじめ花嫁衣装や披露宴にも用いられます。
中振袖は袖の長さが100センチ前後で、結婚式やパーティーなどの華やかなシーンにおすすめ。小振袖は袖が75センチ前後と振袖のなかでは短く、小学校の卒業式などで着られています。
訪問着(ほうもんぎ)
訪問着は、黒留袖や色留袖と同様の絵羽模様ですが比翼仕立てにはなっておらず、肩や袖、襟にも柄が入っているのが特徴です。
既婚・未婚を問わず着ることができ、格調高い古典柄や豪華な柄のものは三つ紋・一つ紋を付けて準礼装として装うことができます。
また、紋なしの訪問着ならお宮参りや七五三、入学式や卒業式などの行事の際に幅広く着用できるようになります。
ただし、紬の訪問着は外出着として扱われ、高価なものでも礼装としては不向きとされてるため注意が必要です。
色無地(いろむじ)
黒以外の一色に染められた柄のない着物のことを、色無地といいます。全体的に柄の入った訪問着に比べると、華美になりすぎず控えめな印象になるのが特徴です。
無紋の色無地は比較的カジュアルな外出やお稽古などの日常的な場面で着用しますが、紋が一つでも入れば無紋の訪問着より格上になります。
近年では紋付の色無地を帯や小物を揃えて格調高く整え、よりフォーマルな場面で着る場合もあります。
子どもが主役の行事に付き添う母親が着たり、また、格式を重んじる『炉開き』や『初釜』といった茶会で着用したりするのにも適した着物といえるでしょう。
地紋(織りが模様として浮かび上がる生地)がなく暗い地色のものであれば、喪の帯や小物をあわせることで色喪服として弔事にも使用できます。
付け下げ(つけさげ)
付け下げは、訪問着と色無地に次ぐ準礼装の着物です。
訪問着と同じ絵羽模様に見えますが、反物の段階で染め上げ、柄が縫い目にかからないよう分割して配置されているのが特徴です。
ただし、現在は柄行が多様化し区別がつきにくいものもあるため、模様の格や豪華さで着分ける必要があります。
子どもの行事の付き添いやお茶会、パーティーなど、幅広いシーンで着用可能な着物です。
小紋(江戸小紋)
小紋は、パターン型で全体に模様や柄が繰り返し染められた外出着です。柄によって、『江戸小紋』『加賀小紋』『京小紋』などが存在します。
基本的にはカジュアルな装いとしてお稽古や観劇などで日常的に着られる着物ですが、小紋はデザインが多彩で、柄によってはややフォーマルな場面でも着用できます。
例えば、手鞠や御所車などの古典柄はくつろいだ雰囲気のパーティーやお茶会に、飛び柄の吉祥文様はカジュアルながら上品さもあるため、改まった席にも着られるでしょう。
小紋の一種である江戸小紋は、元々武家の裃(かみしも)に使用されていた柄で、遠目には無地に見える程に細かな一色染めの柄が特徴です。
通常の小紋と同様に外出着の格ですが、『三役(鮫小紋・角通し・行儀)』や『大名家の定め柄』など、一部の柄に限っては略礼装としても着用可能です。
御召(おめし)
御召は御召縮緬(おめしちりめん)の略で、小紋に次ぐ格の外出着です。
紬や木綿と同じ織りの着物ですが、先練り先染めの特殊な糸で織られ、染めと織りの着物の中間的な性質をもつため、織りの着物のなかでは最高級に位置づけられています。
光沢があり皺になりにくい生地で使いやすく、観劇や食事会などの日常的な外出からお稽古まで、幅広いシーンで着用可能な着物です。
紬(つむぎ)
織りの着物の代表ともいえる紬は、紬糸を使った先染めの織物の外出着です。代表的なものに『大島紬』『結城紬』『牛首紬』などがあります。
古くは養蚕農家が残った繭を利用して織ったもので、丈夫なため庶民の普段着として着られていましたが、現在では気負わずにおしゃれを楽しめる着物として人気があります。
仕立て上がりは張りがありますが、着古していくうちに体になじみ着やすくなるのも特徴です。
浴衣(ゆかた)
浴衣は通気性のよい綿製の着物で、着物のなかで最もカジュアルな装いに位置づけられます。形状は着物とほぼ同じですが、薄手で直接肌着の上に着るため夏場の着用が原則です。
起源は身分の高い人が入浴の際に着た湯帷子(ゆかたびら)だといわれ、現在は花火大会や夏祭り、旅館でのくつろぎ用などとして身近に活用されています。
足元は下駄が基本ですが、襟つきの肌襦袢や足袋などをあわせれば、着物風の着こなしも楽しめます。
格式順│男性の着物の種類
ここでは、男性の着物についてご紹介します。
礼装
男性が着物を着る際にも、特別な場では格の高い着物を着る必要があります。
黒羽二重五つ紋付(くろはぶたえいつつもんつき)
男性の和装における正礼装は、黒羽二重五つ紋付と呼ばれる羽織と袴のセットです。この着物には背中・両袖・両胸の5ヶ所に家紋が施され、素材は正絹が一般的です。
代表的な着用シーンは結婚式の新郎衣装ですが、新郎はもちろん仲人なども年齢に関係なく黒羽二重五つ紋付を着用します。
色紋付(いろもんつき)
色紋付は、黒以外の着物に羽織と袴をあわせたスタイルで、準礼装または略礼装として位置づけられます。
女性の着物の色留袖と同等の格になりますが、素材や紋の数により幅広い活用が可能で、五つ紋が付いた色紋付なら新郎の婚礼衣装としても着用できます。
素材には羽二重や紋綸子(もんりんず)、縮緬などが用いられ、無地ながらも個性的な色使いが楽しめる装いです。
外出着・おしゃれ着
外出着は、少し格が出るものから趣味で着られるものまで応用範囲が広い着物です。紋がつくと礼装として扱われる場合もあります。
紬(アンサンブル)
紬は、袴を着ずに着流しでも着用できる着物です。通常は外出時に羽織をあわせ、招待されたときなどは袴も着用するのが望ましいでしょう。
ウール(アンサンブル)
ウールの着物は単衣仕立てとなっていて、冬から春、秋と長く着用できます。比較的お手入れが簡単で、外出着として気軽に着用できるのが魅力です。
季節別│着物の種類
衣替えをして、季節に合った着物を選ぶことも大切です。着物は、大きく3種類の仕立てに分けられます。
- 寒い季節には裏地の付いた『袷(あわせ)』
- 春や秋には裏地のない『単衣(ひとえ)』
- 暑い時期は軽く涼しい素材の『薄物(うすもの)』
ここでは、季節別の着物の種類について詳しく解説します。
袷(あわせ)
袷は、胴裏、袖裏、裾回しなどの裏地を付けて仕立てられた着物で、着用シーズンは10月から5月頃までとされています。
表地と裏地の二重構造が体の冷えを防ぎ、温かく過ごせるよう工夫された着物です。
単衣(ひとえ)
単衣は袷から裏地をのぞいて仕立てたもので、6月や9月のような季節の変わり目に着る着物です。
見た目は袷と同様に見えますが、裏地がないため袷程の保温性はなく、着用時に着物のラインが出にくくなる場合もあります。
薄物(うすもの)
7月から8月の暑い時期に着るのが薄物です。
使用される布地には紗(しゃ)、絽(ろ)、麻、上布(じょうふ)などがあり、裏地を付けずに仕立てることで軽く涼しい着心地になります。
まとめ
着物には着るシーンや立場によって相応しい格があることを解説しました。
完璧に覚える必要はありませんが、着物を楽しんで着るためにも、着物の格の基本を知っておくと役立つでしょう。
どのような着物を着たらよいのか分からないときは、ぜひ『京都着物レンタルの福本』にご相談ください。
当店ではお客様のご要望やお召しになるシーンにあわせて、最適なお着物をご提案させていただきます。
特別な日を彩る、すてきな着物の着こなしをお手伝いさせてください。スタッフ一同、心よりお待ちしております。