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正絹とは?他の着物の生地との違い・見分け方・メリットデメリット
着物の基礎知識
目次
着物の生地にはさまざまなものがあり、「正絹(しょうけん)」もそのひとつです。
文字通り絹の部類に入りますが、正絹と絹には違いがあり、正絹ならではのメリットがあることをご存知でしょうか。
正絹で作られた着物は着心地のよさや高級感がある一方、独特のデメリットもあるため、選ぶ際には特徴を知っておくことが重要です。
この記事では、正絹の特徴や正絹着物のメリット・デメリット、お手入れ方法などについて詳しく紹介します。
正絹(しょうけん)とは?
正絹は高級な着物で使われることが多い素材です。絹の一種ではありますが、一般的に言う絹とは少々違う部分もあります。
ここでは、正絹の定義や特徴について紹介します。
正絹と絹(シルク)の違い
絹というと「シルク」を思い起こす人も多いでしょう。もちろんその連想は間違いではなく、絹=シルクと考えても差し支えありません。
「では正絹は?」となると少し話が変わります。正絹は厳密に言うとシルクとは異なり、「絹100%で作られた生地」という定義です。
正絹の絹糸は、蚕が生み出したものをダイレクトに使っています。
その一方、一般的な絹は加工が施されているため、100%天然の正絹とは違い、加工品として認識される糸です。
当然ながら正絹のほうが希少性があり、高級品として扱われます。
見た目や手触りの高級感や輝きもグレードが高く、着物ファンなら正絹で作った着物を1枚は手に入れたいと思うことも少なくありません。
正絹の着物のメリット
正絹で作られた着物にはさまざまなメリットがあります。肌触り、高級感、快適性など、ここでは代表的なメリットを5つ紹介します。
肌触りが良く着崩れしにくい
正絹の着物は肌触りがよく、着心地も非常によいものです。
正絹の成分である絹の繊維は、もともと人間の肌が持つタンパク質と似た成分でできているため、地肌と触れても抵抗を感じにくく、抜群のフィット感が感じられます。
それでいて腰紐や帯は滑りにくい性質があり、着崩れ防止にうってつけの性質です。化学繊維と相性が悪く、肌への刺激を感じることが多い人にもおすすめです。
正絹は確かに高級品で試しにくい印象かもしれませんが、最近は気軽に試せる着物レンタルショップでも、正絹の着物を取り扱っているケースもあります。
高級感がある
正絹は特有の光沢感を持つ素材です。
この光沢感はほかの素材では見られない高級感をかもし出し、着物を仕立てたときには上質で美しい品をそなえた1着が完成します。
また、光沢感が非常に自然であることも大きな特徴です。不自然に演出された高級感はどこかで違和感が生じるものですが、天然100%の正絹はそんなことがありません。
特別な高級感を持ち、しなやかで美しい印象を生み出す正絹の着物は、袖を通した人の魅力をさらに増す効果を発揮することでしょう。
季節を問わず快適に着られる
正絹の大きな特徴のひとつとして、通気性・保温性に優れている点が挙げられます。正絹で仕立てた着物は、夏は涼しく冬は暖かく、どんな季節でも着用しやすい1着になります。
時期を問わずに使う機会がある訪問着や留袖はもちろん、真冬に着る振袖にもうってつけ。防寒着なしで華やかな振袖を着れば心も華やかになり、喜びもひとしおでしょう。
実際、正絹で作られた着物は昔から人気があります。
前述の通り高級感があることや着崩れしないことも大きな魅力ですが、通気性や保温性などの点でも魅力を感じる人が多いのではないでしょうか。
静電気が起こりにくい
振袖といえば白いファーショールが定番ですが、着物の素材によっては摩擦や静電気が起きてしまうこともあります。
その点、正絹は静電気が起きにくい性質があるため、乾燥した冬の時期でも静電気に悩まされずに着物姿が楽しめます。
静電気が起こりにくい理由は、絹繊維の水分率が高いためです。特に正絹は絹100%でできているため、静電気が起きる確率が非常に低い性質があります。
化学繊維では起きやすい静電気も、正絹なら心配ありません。静電気体質の人は、正絹やシルク素材を生活に取り入れてみるのもよい対策になります。
独特の光沢感ある風合いを楽しめる
正絹の最大の魅力は、独特な光沢感でしょう。ほかの素材では見られないような品のある輝きは、正絹ならではの美しさです。
独特な光沢感は繊細な風合いを出し、着物の雰囲気に特別な高級感をプラスします。
華やかな振袖でもシンプルな訪問着でも、正絹で作られた着物はほかにない美しさで人々を魅了するでしょう。
特別な時間に身に付ける着物を作るのなら、理想的な素材です。人生の節目や長く着続けたい着物を作りたい人には最適ではないでしょうか。
正絹の着物のデメリット
メリットが多い正絹ですが、人によってはデメリットと感じられる部分もあります。価格の高さや洗濯・手入れ・保管の難しさなど、ここではデメリットについて紹介します。
価格が高い
もともと絹製品は化学繊維(ポリエステルなど)製品と比較すると高額になる傾向があり、正絹も例外ではありません。価格の高さをデメリットだと感じる人もいるでしょう。
特に正絹は絹100%で作られている天然素材であり、加工された絹よりも希少性が高いため、価格が高くなることは仕方ないことだともいえます。
しかし価格が高い分、正絹で作られた製品の高級感や光沢感、快適性はほかの素材と比較すると上質であることも確かです。価格の高さは品質の証明であるとも考えられます。
自宅での洗濯が難しく手入れが大変
摩擦の弱さや環境により変質する可能性がある正絹は、自宅での洗濯が難しく、手入れが大変です。
繊細な取り扱いが必要で、一般的な素材を使った衣類よりも手間がかかるため、ほとんどの人はクリーニング業者に出すことになります。
シルク製品の中には自宅の洗濯機でも洗えるタイプがあるため、正絹も同じように考えるかもしれませんが、正絹は自宅の洗濯に適していません。
絹の中でも特にデリケートな取り扱いが必要な素材だと覚えておきましょう。
雨に弱くシミになりやすい
正絹はとても繊細な素材のため、雨にも気をつける必要があります。雨に濡れるとシミになりやすく、せっかくの着物が台無しになってしまうことも懸念されます。
できれば雨の日は正絹の着物での外出は避けたいところですが、どうしても着る必要があるときには対策が必要です。
着物用のコートを着たり正絹にも使える撥水スプレーを使ったりするなど、対策を立てておきましょう。
しかし、撥水スプレーの中には正絹に向かないものもあり、使う正絹を変質させる可能性があるため、必ず成分を確認してください。
万が一雨に濡れてシミができてしまったら、早めにクリーニングへ出しておきましょう。
保管方法によっては変色が起こる
正絹は保管方法にも注意が必要です。
保管状態が悪い場合、生地が変色や色あせを起こしてしまうことがあり、せっかくの風合いが劣化してしまいます。
直射日光を避けられて、通気性のよい衣装ケースやタンスでの保管を心がけましょう。
さらに、保管中は変色のほか、カビや虫食いの心配もあるため、通気性の確保のほか、着物にも使える除湿剤や防虫剤も必要です。
また、着物に金糸や銀糸が使われているのなら、着物用でも金糸・銀糸対応タイプが適しています。
非対応の製品だと金糸や銀糸が変色してしまうことがあるため、購入する際には対応・非対応を必ず確認してください。
正絹の着物の見分け方
最近は技術の発達により、化学繊維でも美しい光沢や高級感を出す素材が増えています。
特にウールやポリエステルの場合、すぐに正絹と見分けがつかないクオリティのものも見られるようになりました。
ここでは、正絹の着物かどうかを見分ける方法について紹介します。
見た目(光沢)をチェックする
絹100%の正絹には、他の素材とは一線を画する光沢があり、迷ったときにはまず光沢をチェックすると分かりやすいです。
化学繊維の中でもポリエステルは上質の光沢を持っていますが、実際に正絹と比較して違いを確認してください。
しかし、どうしても判断がつかない場合や確信が持てない場合には、以下で紹介する他の方法も試してみましょう。
手触りの良さをチェックする
生地を触って手触りを確認する方法もあります。
正絹はなめらかでしっとりとした独特の感触があり、化学繊維の乾燥した手触りとは異なる触り心地です。
触りながら生地をこすり合わせたときにキュッと音がすることも正絹の特徴です。生地を傷めないように気をつけながら、軽くこすり合わせて手触りと音を確認してください。
仕立てをチェックする
着物の仕立て方をチェックすることも見分けるときに役立つ方法です。具体的には「ミシンを使っているか」「手縫いか」という点に注目しましょう。
正絹は、一般的に手縫いで仕立てることが多いです。
縫い目を確認し、表に縫い目が生地の表側に出ているかどうかを確認してください。手縫いの場合は縫い目が表に出ないため、正絹である可能性が高くなります。
糸や切れ端を燃やしてみる
火気が使える場所で確認できるのであれば、糸や切れ端を燃やして確認する方法もあります。
着物を傷めないように注意しながら糸や切れ端を取り、マッチやライターなどを使って燃やしてみてください。
正絹の場合は黒く燃え、燃えカスを指でもむと灰になり、髪の毛を燃やしたときのような匂いがします。
一方、化学繊維は固まった状態になるため、ひと目で比較できるでしょう。ウールは正絹と似たような燃え方ですが、正絹よりもきつい匂いがします。
正絹の保管やお手入れのポイント・注意点
正絹は適切に保管しなければ変色や色あせ、虫食いなど、品質劣化の恐れがあるデリケートな素材です。また、着用するときのお手入れにも気を配る必要があります。
ここでは、正絹の着物の保管方法やお手入れ方法について紹介します。
直射日光を避け風通しの良い場所で保管する
直射日光は色あせが起こる原因になるため、日光が当たりにくい場所に保管しましょう。湿気への弱さにも考慮し、風通しのよい場所であることも重要です。
また、着用後は着用中に吸収した汗や外気の湿気を乾かす必要があります。このときも色あせ対策として直射日光を避け、陰干しでしっかり乾かしましょう。
1回着用した場合は2~3日、汗を多くかいた場合は3~4日ほど陰干ししてください。
汚れたら放置せずすぐに落とす
正絹の着物は、付着した汚れを放置するとシミや変色を起こしやすくなるため、汚れに気づいたらすぐに処置してください。
簡単な汚れなら清潔なガーゼやハンカチ、着物ブラシなどを使って拭います。強くこすると生地が傷む恐れがあるため、優しく丁寧に拭いましょう。
落ちない汚れの場合は無理をせずクリーニング業者に出してください。着物にも使えるシミ抜きなどもありますが、正絹はデリケートな素材のため、専門業者に任せたほうが安心です。
畳んで専用の袋などに入れて保管する
保管するときには、たとう紙(畳紙)を使って1着ずつ包み衣装箱やタンスへ入れます。
たとう紙は吸湿性が高く、保管中の湿気による傷みやカビの発生を防ぐ効果があります。通気性と防虫効果が高い桐箪笥と合わせて使えればなお効果的です。
これらの環境を整えられないときは、着物を保管する専用の袋をおすすめします。袋に入れるだけで湿気やカビ、虫などから着物を守る効果があるため、手軽に活用してください。
年に数回虫干しを行う
年に数回虫干しをして新鮮な空気に当て、こもった湿気を取り除きましょう。湿気は変色やカビを招きます。
梅雨明けの時期(7~8月)、秋口(9~10月)、乾燥する時期(1~2月)が虫干しによいタイミングです。
毎回手間や時間がかかりますが、季節ごとの行事として楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
正絹は独特の光沢感や高級感があり、手触りや着心地はほかの素材と一線を画しています。着物好きなら一度は袖を通してみたいと思うでしょう。
京都の着物レンタル福本では、正絹の着物を多く取りそろえています。数千円から利用できるプランもあり、手軽に正絹に触れてみたいという人にも最適です。
清水寺から一番近い場所にあるため、着付けとヘアセットを終えてすぐに清水寺近辺の散策に出られる楽しみもあります。
美しい風合いを持つ正絹の着物をまとい、日本の古都をそぞろ歩いてみませんか。